2016年9月17日土曜日

油滴天目、12億円で落札@Christie's

 今週はアジア美術品競売の週だった。

坂本五郎競売のことは前に書いたが、
http://nykanwa.blogspot.com/2016/08/blog-post_31.html
その競売の落札結果は100%完売で、売上げ合計は
$2.5 million(約2億5千万円)というニュースが入ってきたのが火曜日13日。

今回のアジア競売は日本美術品はなく、中国陶磁器が多かった。とくに、
メトロポリタン美術館が放出する中国陶磁作品が注目されていた。
メトロポリタンは19世紀末から20世紀はじめにかけて、大勢の個人コレクターから
中国陶磁器コレクションの寄贈を受けた。
数だけでも相当なものになるのだろう。展示スペースも限られているし、
似たような作品やダブっている作品も多い。
 それらを整理して、特に重要でないものを売りに出すことにしたわけだ。

寄付してもらったものを売って換金するのは、美術館の世界では普通は禁じ手だが、
このようにダブりが多い場合、そして売ったお金で違うタイプの作品を買って、
コレクション全体の質をあげることがわかっている場合は、往々にして許される。

一方で、買う側は、メトロポリタン美術館蔵という来歴がつくので、喜んで買う。
というわけで、人気ありましたね、この競売。

しかし、今回のクリスティーズ競売、知る人ぞ知るの本命はもうひとつの
The Classic Age of Chinese Ceramics-The Linyushanren Collection, Part IIだった。
作品は南宋、北宋の陶磁器で、みんな美しい。日本人が好んだ唐物の陶磁器
であることはすぐにわかる。 Linyushanrenは日本人(知っている人は
知っている)。

この中で、今回のハイライトは黒田家伝来の油滴天目茶碗だった。

播磨の黒田家伝来といっても、書類で辿れるのは19世紀に入ってから。
だから黒田家にいつ入ったのかは本当はよくわからない。
この競売カタログの巻末には油滴天目の現存リストがあり、
それによると世界で15点。フリーア・ギャラリーを除き、全点が
日本にある。それだけでもすごく興味深い。
茶碗と付属物を入れる箱がすごい
私は先週の土曜日に見に行ったが、皆さん、展示ケースから出してもらって、
なめるようにして見ていましたね(笑)。この茶碗は口碗部が銀色で、
それが東洋陶磁美術館にある国宝の油滴天目(口碗部金色)と違う点。

すごい競りになるだろうと思っていたら、評価額$1.5〜2.5ミリオンの所、
$11.7 ミリオン(コミッション含む)までいった。桁がひとつ違ったわけだ。
約12億円!うーーん。

最近、Christie'sのプレスレリースの書き方が変わって誰が買ったかを推測するのが
前よりもっとわかりにくくなっているので、買い主はわからないけれど多分中国人
だろう。メトロポリタン美術館競売にしてもそうだが、その昔、自分の国から出て
行った宝物を買い戻したいという気持ちはわかるし、いまそれだけの財力があるの
だから。

そのうちに、中国のどこかの美術館で展示されるかもしれない。

カタログのエッセイに私の山中商会の著書が引用されていたので、買おうと思ったら
売り切れていた。Kさんにお願いして一冊いただいた。感謝。